AI と転職
内定後の年収交渉、希望額はChatGPTに聞いていい? 給与の内訳を今と比べるプロンプト
内定後の年収交渉で、希望額を ChatGPT に決めさせるのはおすすめしません。提示額と職務経歴書だけを渡して希望額を聞いたところ、ChatGPT は 3 回とも内定先の固定残業代や賞与を知らないまま金額を決め、その額をメールに書き込みました。内定先の書面と今の給与を同じ項目で比べ、確かめる質問と希望額を空欄にしたメールを作るプロンプトの全文と、希望額・最低額の決め方を載せます。
公開 2026年9月23日 · 更新 2026年10月11日 · PREVIO 編集部

この記事で分かること
- ・ChatGPT に頼むのは内訳の比較と希望額を空欄にしたメールまで。返ってきた表は書類と照らし、空欄を承諾前に聞く
- ・希望額と最低額は自分で決める。最低額は、上がらなくても入社するかどうかの境目になる年収
- ・提示額と職務経歴書だけで希望額を聞いた 3 回とも、ChatGPT は内定先の内訳を知らないまま 480 万円をメールに書き込んだ
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内定先から提示された年収が、今とほとんど変わらない。あるいは希望より低い。承諾の返事をする日も迫っている。ChatGPT に「いくら希望すればいいか」と聞けば、金額も交渉のメールも出してくれそうに思えます。
希望額は、ChatGPT に決めさせないでください。当サイト PREVIO で、提示額と職務経歴書だけを渡して ChatGPT のウェブ版に 3 回聞いたところ、3 回とも職種の平均年収を検索し、経歴の実績と合わせて 480 万円を勧め、その額をメールに書き込みました。内定先の固定残業代や賞与の計算は、聞かないまま決めていました(試した結果)。
先にやるのは、提示額と今の年収を同じ項目に分けて比べることです。総額だけを比べると、中身の違うものを比べることになります。片方の月給には固定残業代が入っていて、もう片方は残業代が別に出ている、ということが起こります。賞与も、今の会社の分は実績で、内定先の分は見込みです。
いきなり交渉しなくてもかまいません。承諾の前に、条件を確かめる質問から始められます。上がらなくても入社するかどうかの境目になる年収(最低額)を、相談のメールを送る前に決めておけば、希望額が通らなかった時も慌てずに済みます。ChatGPT には、今の給与と比べた表、内定先に確かめる質問、希望額を空欄にしたメールの下書きを作ってもらいます。
この記事では、架空の人を例にします。アパレルの販売員として 2 年働いたあと、中小企業向け SaaS の会社でカスタマーサポートを 3 年半担当していて、今の年収は 400 万円です。別の SaaS の会社のカスタマーサポートに内定し、提示は 420 万円、応募した求人票の年収の幅は 380〜520 万円でした。
手順は次の 4 つです。
- 書類をそろえる: 内定先の書面、求人票の給与欄、今の給与の内訳、職務経歴書、似た求人の給与欄の 5 つ。手元に無いものはなくてよい
- ChatGPT に内訳の比較とメールの下書きを頼む: 内訳の比較、相談の理由、確かめる質問、希望額を空欄にしたメールの 4 つを、下のプロンプトで頼む
- 返ってきた表を書類と照らし、書いていない所を内定先に聞く: 書面に無い数字は「書いていない」と書き直し、その項目を承諾前の確認として聞く。返事が来たら手順 2 をもう一度
- 希望額と最低額を決めてメールを送る: 金額は自分で決め、確かめた理由だけでメールを送る
1. 書類をそろえる
ChatGPT に渡すのは次の 5 つです。手元に無いものは飛ばしてかまいません。
| 書類 | 例の人の場合 | |
|---|---|---|
| ① | 内定先から届いた条件(労働条件通知書や内定のメール) | 月給 30 万円(固定残業代 20 時間分 3.8 万円を含む)、賞与は業績連動で前年度実績 2.0 か月分、想定年収 420 万円 |
| ② | 応募した求人票の給与欄 | 想定年収 380〜520 万円、経験・能力を考慮して決める |
| ③ | 今の給与の内訳(源泉徴収票と給与明細) | 年収 400 万円。月給 27 万円(基本給 25 万円、職務手当 2 万円)、賞与 約 72 万円、残業代は別に支給 |
| ④ | 職務経歴書 | 問い合わせ対応 月 400 件、一次解決率を 58% から 72% に改善、ヘルプ記事 60 本の執筆など |
| ⑤ | 同じ職種で見つけた、似た求人の給与欄 | 3 社分 |
③は、源泉徴収票の総額だけでなく、給与明細の項目(基本給、手当、残業代)まで書き写します。⑤は、役割が近い求人だけにします。リーダー候補の求人のように職責が違うものは、比べる相手になりません。
貼る前に、氏名、住所、社員番号、今の会社と内定先の社名、担当者の名前を消します。残すのは、項目名と金額、時間数、条件の文です。明細を丸ごと貼らずに、項目名と金額だけを書き写してもかまいません。ほかに消したほうがよい情報は、記事「職務経歴書をAIに渡す前に消す個人情報」にまとめています。
2. ChatGPT に内訳の比較とメールの下書きを頼む
プロンプトでは、次の 4 つを頼みます。
- 提示額の内訳を、今の給与と項目ごとに比べる
- 相談の理由を、書類のどこに書いてあるかと一緒に挙げる
- 確かめないと理由に使えないことを、内定先への質問にする
- 希望額を空欄にしたメールの下書きを作る
新しいチャットを開き、次の文を貼って、末尾の「(ここに①〜⑤を貼る)」を手順 1 の書類に置き換えて送ります。最後に、人事の担当者から聞き返されそうな質問も出させています。
内定先から年収の提示を受けました。提示額を上げてもらえないか相談するための準備を手伝ってください。
下に、次の 5 つを貼ります。
① 内定先から届いた条件(書面の写し)
② 応募した求人票の給与欄
③ いまの年収の内訳(源泉徴収票や給与明細から)
④ 職務経歴書
⑤ 同じ職種で見つけた他の求人の給与欄
手元に無いものは貼っていません。
次の 4 つを、この順で答えてください。
1. 提示額の内訳
①の年収が何(基本給、固定残業代、賞与、手当)でできているかを整理し、③と項目ごとに比べてください。①と③のどちらかに書いていない項目は、比べずに「書いていない」と書いてください。
2. 相談の根拠
相談の根拠になることを、①〜⑤のどこに書いてあるかを添えて並べてください。①〜⑤に書いていない数字(世の中の相場、平均年収、業界の水準など)は使わないでください。確かめないと根拠にできないことは「【確認:〜】」として、私が内定先か手元の書類で確かめる質問の形にしてください。
3. 相談のメールの下書き
希望額は私が決めるので、「【希望額: 万円】」の空欄のままにしてください。根拠は 2 で挙げたものだけを使い、内定のお礼と入社を前向きに考えていることを先に書いて、全体を 300 字以内にしてください。
4. 聞き返されそうなこと
人事の担当者から聞き返されそうな質問を 3 つ挙げ、それぞれ、答える前に私が手元で確かめておくことを書いてください。
(ここに①〜⑤を貼る)
返ってくるもの
例の人の書類で 3 回試すと、3 回とも希望額は空欄のままで、世の中の相場や平均年収の数字は使いませんでした。月給に固定残業代が入っていること、賞与の計算の基準(何に 2.0 か月分を掛けるのか)が書面に無いことも、3 回とも挙げました。
内訳の比較は、次のような表で返ってきます(3 回目から抜粋)。
| 項目 | ① 内定先 | ③ 現職 | 差額・比較 |
|---|---|---|---|
| 年収 | 420万円(想定) | 400万円(実績) | +20万円 |
| 月給 | 300,000円 | 270,000円 | +30,000円 |
| 基本給 | 262,000円 | 250,000円 | +12,000円 |
| 固定残業代 | 38,000円/月(20時間分) | なし | 支給方式が異なる |
| 職務手当 | 書いていない | 20,000円/月 | 比較不可 |
| 賞与 | 年2回、前年度実績2.0か月分 | 年2回、約720,000円 | 算定基準が異なる |
確かめる必要があることは、【確認:〜】の印を付けた質問で挙げてきます。1 回目には、次の質問がありました。
【確認:賞与2.0か月分は、基本給と月給のどちらを基準に計算していますか。また、想定年収420万円は保証額でしょうか、それとも前年度実績に基づく試算でしょうか?】
メールの下書きと聞き返されそうな質問は、手順 4 で使います。
3. 返ってきた表を書類と照らし、書いていない所を内定先に聞く
上の表の「基本給」の行にある 262,000 円は、内定先の書面のどこにも書いていません。月給 30 万円から固定残業代 3.8 万円を引いた額で、ChatGPT は 3 回とも同じ計算をして表に入れていました。1 回目と 2 回目は計算した値だと書き添えていましたが、3 回目は何も添えていませんでした。月給には、固定残業代のほかに手当が入っているかもしれません。書面に無い数字は消して、「書いていない」と書き直します。
比べる時は、残業代・固定残業代・賞与を別の行に分けます。今の会社は年収から去年受け取った残業代を除いた額、内定先は提示額から固定残業代の年額を除いた額を見ます。賞与は、今の実績と内定先の見込みを別々に置きます。例の人の書類で照らし直すと、こうなります。
| 項目 | 今の会社 | 内定先 |
|---|---|---|
| 月給 | 27 万円(基本給 25 万円、職務手当 2 万円) | 30 万円 |
| うち固定残業代 | なし | 3.8 万円(20 時間分、年 45.6 万円) |
| 固定残業代を除いた月給 | 27 万円 | 26.2 万円 |
| 基本給 | 25 万円 | 書いていない |
| 残業代 | 月 5〜10 時間分を別に支給(額は書いていない) | 20 時間を超えた分を追加で支給 |
| 賞与 | 約 72 万円(2025 年の実績) | 60 万円(想定年収から月給 12 か月分を引いた見込み。業績連動) |
| 年収 | 400 万円(源泉徴収票) | 420 万円(想定) |
総額では 20 万円上がって見えます。ところが、固定残業代を除いた月給は 27 万円から 26.2 万円に下がり、賞与は今の実績 約 72 万円に対して、内定先は見込みの 60 万円です。その代わり、内定先の 420 万円には 20 時間分の固定残業代が年 45.6 万円入っています。今の会社でも残業代は別に出ているので、給与明細でその額を確かめれば、残業代も比べられます。
賞与の見込みも、基準しだいで変わります。2 回目の出力は、月給の 2 か月分なら 60 万円、固定残業代を除いた額の 2 か月分なら 52.4 万円で、想定年収は 412.4 万円になると計算していました。今の会社の側も、月給 12 か月分と賞与を足すと 396 万円で、源泉徴収票の 400 万円と 4 万円ずれます。差の内訳は書類に書いていません(3 回とも指摘していました)。
表の「書いていない」が、そのまま内定先に聞くことの一覧になります。例の人なら、聞くのは次のとおりです。
- 月給 30 万円のうち、基本給、手当、固定残業代はそれぞれいくらか。固定残業代は何時間分で、超えた分はどう払われるか
- 賞与は何を基準に何か月分か。業績でどう変わるか。入社した年の賞与はどう扱うか。ここ数年の支給実績
- 想定年収 420 万円に何を含めて計算したか
- 最初の昇給はいつで、何で決まるか
ここで送るのは、年収を上げてほしいという相談ではなく、承諾の前に条件を確かめる質問です。労働条件のうち、賃金の決め方・計算・支払いの方法は書面で示すことになっていて、本人が望めば電子メールなどでもかまいません。賞与は定めがあれば示すものですが、書面にする決まりはありません(確かめよう労働条件「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」)。書面に総額しか書いていなければ、承諾の前に内訳を聞いてかまいません。
送り先は、人材紹介会社を通して応募したなら担当者、直接応募なら内定先の採用担当者です。質問はまとめて 1 通にします。メールで聞けば答えが項目ごとに文面で残り、手順 2 で貼る①の書類に加えられます。
承諾の期限に返事が間に合わないかもしれない時のお願いは、このメールに最初から 1 文入れておきます。内訳を確かめてから返事をしたいこと、回答が期限の直前になるなら返事を少し待ってもらえるか、の 2 つです。期限の直前に切り出すより、確認のメールの中で先に聞いておきます。
このメールの下書きも ChatGPT に頼めます。その時は、金額の希望は書かずに確認だけにする、と添えます。送る前に自分で読み直してください。
返事が来たら、その内容を①の書類に加えて、手順 2 のプロンプトをもう一度送ります。
4. 希望額と最低額を決めてメールを送る
希望額は、次の 3 つを順に並べて、説明がつく額にします。
- 固定残業代・残業代を除いた額の差: 手順 3 の表で、今より下がっている項目があれば、それが 1 つ目の理由になります
- 求人票の幅と決め方: 例の人の求人票には 380〜520 万円とあり、「※経験・能力を考慮の上、当社規定により決定します。」と書いてありました。提示の 420 万円がどう評価されてこの額になったかを聞けていれば、その答えも材料になります
- 職務経歴書に書いてある実績: 内定先の仕事で生かせるもので、数字か範囲で言えるもの
この 3 つで説明できない額は、希望額にしません。ただ、実績が何万円分に当たるかを計算する方法は無いので、最後はある程度、自分の判断で決めることになります。例の人なら、手順 3 の表で、固定残業代を除いた月給(26.2 万円)と賞与の見込み(60 万円)が今の 27 万円・約 72 万円を下回っています。今の会社の残業代の額はまだ分からないので、これだけで待遇が下がったとは言えませんが、下回っている項目は、提示の 420 万円より高い額を相談する理由の 1 つにできます。求人票の幅の上限は 520 万円なので、希望額はその範囲に収めます。420 万円と 520 万円の間のどこにするかを、一次解決率の改善のような実績で説明できる範囲で選びます。
最低額は、上がらなくても入社するかどうかの境目になる年収です。提示の 420 万円のままでも入社するなら、最低額は 420 万円でかまいません。目安になるのは、賞与が 0 円の年でも毎月の生活費をまかなえるかです。例の人なら、賞与が出ない年の年収は、月給 30 万円の 12 か月分で 360 万円です。最低額は、手順 3 の返事で内訳が分かってから、相談のメールを送る前に決めます。
相談の理由は、経験の長さではなく、求人票の仕事内容のどれに、自分が実際にやったどの仕事が生かせるかを、組にして書きます。例の人なら、職務経歴書にあるとおり、マクロとタグの運用を整えて一次解決率を 58% から 72% に改善したことを、内定先のカスタマーサポートの仕事と結びつけて書きます。職務経歴書に無い役割や成果を足して大きく見せると、面接や入社後に聞かれた時に困ります。
総額どうしを比べて今より上がっているなら、総額が今より下がるから、という理由は書きません。比べた数字と食い違うからです。例の人は総額では 20 万円上がっているので、1 回目の出力も、現職より 20 万円しか上がらないという総額の言い方より、実績と求人票にある経験・能力の評価を中心にするよう勧めていました。
手順 2 で返ってきたメールの下書きは、次のとおりです(1 回目から、本文をそのまま写しています)。
採用ご担当者様
このたびは内定ならびに労働条件のご提示をいただき、誠にありがとうございます。貴社への入社を前向きに考えております。
給与条件について一点ご相談がございます。
現職ではSaaSのカスタマーサポートとして月400件の問い合わせ対応やFAQ整備に取り組み、一次解決率を58%から72%に改善してまいりました。
求人票に記載の給与範囲と、これまでの経験・実績を踏まえ、想定年収【希望額: 万円】でご検討いただくことは可能でしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
理由は求人票の決め方と職務経歴書の実績だけで、確かめていない数字は入っていません。【希望額: 万円】を自分で決めた額に置き換え、手順 3 の返事で分かった内訳が理由になるなら書き足して、送る前に読み直します。
出力の最後には、人事の担当者から聞き返されそうな質問が付きます。3 回とも、希望額まで上げられない場合はどうするか、という問いが入っていました。答えるのは、先に決めた最低額です。2 回目の出力はこう添えていました。「最低額は相手にすぐ伝える必要はありませんが、手元で決めておくと回答しやすくなります。」
希望額を ChatGPT に決めさせない理由
金額をそのまま尋ねた頼み方は、次の文の末尾に職務経歴書(手順 1 の④と同じもの)を貼っただけです。
内定をもらいました。提示された年収は420万円です。年収を上げる交渉をしたいので、いくらを希望すればいいか教えてください。交渉のメールも書いてください。
(ここに職務経歴書を貼る)
ChatGPT のウェブ版で 3 回ずつ試した結果を、手順 2 のプロンプトと並べるとこうなります。
| 金額をそのまま尋ねた頼み方 | 手順 2 のプロンプト | |
|---|---|---|
| 渡したもの | 提示額と職務経歴書 | ①〜⑤の書類 |
| 希望額 | 3 回とも 480 万円を勧め、メールに書き込んだ | 3 回とも空欄のまま |
| 理由に使った数字 | 3 回ともウェブ検索をして、求人サイトのカスタマーサポートの平均年収(約 419 万円)を引き、経歴の実績と合わせた | ①〜⑤の数字だけ。相場や平均年収は使わなかった |
| 内定先の固定残業代・賞与 | 触れたのは 3 回中 1 回、1 文だけ | 3 回とも挙げ、確かめる質問にした |
金額をそのまま尋ねると、ChatGPT は提示額の中身を知らされていないので、検索で見つけた職種の平均と経歴の実績から 480 万円を出し、着地の目安まで添えました(450〜460 万円、460〜470 万円、450〜470 万円と、回ごとに違いました)。1 回目は、今の年収や求人票の給与の幅が分からないので暫定の額だ、と断っていましたが、メールにはやはり 480 万円が入っていました。
職種の平均年収を見ても、内定先の給与の仕組みの中で自分がどの水準に置かれるかは分かりません。人材紹介会社の doda は、内定時の提示額は多くの場合、応募先の社員の給与テーブルに当てはめて出されていて、交渉してもテーブルの中での調整にとどまる、と説明しています(doda「転職の給与交渉に失敗…後悔しないために知っておきたい給与交渉の注意点は?」)。比べるなら、職種の平均ではなく、今の自分の給与と内定先の書面です。
AI が勧める給与の額は、誰が聞くか、どの立場で聞くかで変わることも報告されています。4 つの言語モデルに、利用者の属性(性別、民族、移民の種別)だけを変えて面接前の希望年収を数字 1 つで答えさせた研究では、属性の群の中で比べた組の 27.8%(400 組中 111 組)で有意な差が出ました(Sorokovikova ほか「Surface Fairness, Deep Bias: A Comparative Study of Bias in Language Models」)。ChatGPT の基盤モデル 4 版に初任給の提示額を数字 1 つで答えさせた研究では、差がいちばん大きかったのは、モデルの版の違いと、従業員側として聞くか雇う側として聞くかの違いでした(Geiger ほか「Asking an AI for salary negotiation advice is a matter of concern: Controlled experimental perturbation of ChatGPT for protected and non-protected group discrimination on a contextual task with no clear ground truth answers」)。どちらも英語・米国の設定で、経歴を貼って理由つきで聞く頼み方とは条件が違います。また、どちらも金額を 1 つだけ答えさせる実験なので、この記事の頼み方で同じことが起きるかは分かっていません。それでも Geiger らは、この使い方に頼れるほど結果が安定していない、と結論しています。
希望額に届かなかった時は、等級と昇給を聞く
doda は、交渉を経ても上がらないことのほうが多い、と説明しています(同じ記事)。希望額に届かなかった時は、金額の代わりに次のことを聞けます。
- 給与テーブルの上限だと言われたら、それがどの等級の上限なのか
- 次の等級に上がる条件
- 最初の昇給がいつで、何を見て決まるか
doda も、提示額に納得がいかなければ、給与テーブルと提示額がどのレベルに当たるかを確かめるよう勧めています。ただ、聞けば必ず答えてもらえるとは限りません。
ここまで聞けたら、あとは承諾するかどうかを決めます。内訳と等級、昇給の見通しが分かったうえで、手順 4 で決めた最低額に届いていれば承諾し、届いていなければ承諾しない理由になります。
よくある質問
希望額は、今の年収や提示額の何%上乗せが目安ですか
決まった目安はありません。人材会社の記事では、現年収の 10% 前後で上限 20%、1.2 倍まで、30〜50 万円の上乗せ、と会社ごとに違い、どの記事も根拠になる調査を示していません。手順 4 の 3 つで説明できる額にします。
年収の相談は、いつ切り出せばいいですか
内定が出てから、承諾の返事をするまでの間です。doda は、承諾すると条件面も含めて合意したことになるので、承諾後の交渉は避けるよう勧めています。
年収の相談をすると、内定を取り消されませんか
「内定後 給与交渉 取り消し」で検索し、上位の記事と知恵袋を見た範囲(2026 年 9 月 23 日)では、年収の相談をきっかけに取り消される例がどれくらいあるかを示す資料は見つかりませんでした。取り消しの割合を書いた人材会社の記事もありましたが、出典は書かれていませんでした。法的にどうなるかも、この記事では判断しません。分かっているのは、直近 2 年以内に転職した 20〜50 代の会社員 800 人のうち 55.9% が、選考のどこかで年収交渉をしたと答えていることです(マイナビ「マイナビ転職、「転職による年収アップの実態調査」を発表」)。調査の詳しい結果(マイナビ転職「【転職による年収アップの実態調査】転職で年収アップした人は4割。30代の約5人に1人は100万円以上の年収アップに成功」)によると、ここでの交渉には書類選考や一次面接で希望額を伝えたことも含まれ、希望額を伝えた時期は一次面接が最も多く(36.5%)、回答は本人の申告です。交渉しなかった人が挙げた理由の 1 位は、交渉すると印象が悪くなるという心配でした。
不安があるなら、最初は年収の相談ではなく、条件の確認から始めます(手順 3)。上がらなくても入社するかどうかの境目を、相談のメールを送る前に決めておけば(手順 4)、希望額が通らなかった時も慌てずに済みます。
内定先の書面がまだ届いていません。通知書は承諾の後だと言われました
承諾の前に、給与の内訳だけでも書面かメールでもらえないか頼みます。労働条件は、本人が望めば電子メールなどで示してもらうこともできます。ただ、厚生労働省の解説資料は、実際には書面でなく口頭で労働契約を成り立たせることが多いとも書いていて(厚生労働省「労働関係法令の解説(令和7年 10 月版)」(PDF))、細かい書面が必ず届くとは限りません。口頭で聞いた内容は、メモにして担当者に確かめておけば、手順 3 の表に入れられます。
希望額を断られたらどうしますか
提示額が給与テーブルのどの等級に当たるか、次の等級に上がる条件、最初の昇給の時期を聞き、そのうえで最低額に届いているかで承諾するかを決めます(届かなかった時に聞くこと)。
ChatGPT に給与や年収を入力しても大丈夫ですか
社名、氏名、社員番号、担当者の名前を消し、項目名と金額だけを書き写して渡します(手順 1)。ほかに消したほうがよい情報と、渡す前の設定は、記事「職務経歴書をAIに渡す前に消す個人情報」にあります。
求人票の年収の上限まで出してもらえることはありますか
記事「求人票の年収上限はもらえる?」で調べた範囲では、上限まで出る人がどれくらいいるか、どんな経歴なら上限に届くかを示す統計は見つかっていません。求人票だけで、自分が上限に届くかを決めることもできません。求人票の幅の読み方は、同じ記事で扱っています。できるのは、提示額が幅のどこに置かれ、どう評価されてその額になったかを内定先に聞くことです。例の人なら、380〜520 万円の幅の中で、どう評価されて 420 万円になったのかを聞き、その答えを手順 4 の理由に使います。
この記事の数字と出典について
- 試した条件: この記事のために作った架空の書類(SaaS のカスタマーサポート、今の年収 400 万円、提示 420 万円)を、ChatGPT のウェブ版(モデルは gpt-6-thinking、思考量 Medium、一時チャット)に、2 つの頼み方で 3 回ずつ渡しました。毎回新しい一時チャットを開いています。2026 年 10 月 11 日。金額をそのまま尋ねた頼み方には提示額を書いた文と職務経歴書を、手順 2 のプロンプトには①〜⑤を貼りました。金額をそのまま尋ねた頼み方では 3 回ともウェブ検索をし(7〜11 件のサイト)、手順 2 のプロンプトでは 3 回とも検索しませんでした
- 平均年収 約 419 万円: ChatGPT が求人サイト(求人ボックス)から引いた数字です。当サイトでは元のページを確かめていません
- Codex CLI での結果: 2026 年 9 月 23 日に、同じ書類と 2 つの頼み方を Codex CLI(gpt-5.6-sol、ウェブ検索なし)でも 3 回ずつ試しました。金額をそのまま尋ねた頼み方では、ウェブ検索も平均年収も使わずに経歴の実績から金額を出し、希望額は 460 万円、470 万円、480 万円と回ごとに分かれました。3 回とも、提示額の内訳(固定残業代や賞与)を確かめるよう添えてはいましたが、内訳を知らないまま金額を決めてメールに書き込んだ点は、ChatGPT のウェブ版と同じです。手順 2 のプロンプトでは 3 回とも希望額を空欄にし、固定残業代と賞与を挙げ、月給から固定残業代を引いた額を計算していました。こちらもウェブ版と同じ結果です
- 測っていないこと: 1 人分の架空の書類で試した結果です。書面の書き方や経歴が違えば、返ってくるものは変わりえます。モデルや設定が変わっても同じです。相談して年収が上がるか、メールを受け取った会社がどう受け止めるかは試していません
- 出典: マイナビ「マイナビ転職、「転職による年収アップの実態調査」を発表」(直近 2 年以内に転職した 20〜50 代の会社員 800 人、WEB 調査、2024 年 7 月 30 日〜8 月 5 日。調査主体は人材会社)、マイナビ転職「【転職による年収アップの実態調査】転職で年収アップした人は4割。30代の約5人に1人は100万円以上の年収アップに成功」(同じ調査の詳しい結果。交渉の範囲、希望額を伝えた時期、交渉しなかった理由)、doda「転職の給与交渉に失敗…後悔しないために知っておきたい給与交渉の注意点は?」(人材紹介会社の説明で、調査ではない)、確かめよう労働条件「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」、厚生労働省「労働関係法令の解説(令和7年 10 月版)」(PDF)、Sorokovikova ほか「Surface Fairness, Deep Bias: A Comparative Study of Bias in Language Models」(4 つの言語モデル、英語、米国デンバーの 2024 年という設定)、Geiger ほか「Asking an AI for salary negotiation advice is a matter of concern: Controlled experimental perturbation of ChatGPT for protected and non-protected group discrimination on a contextual task with no clear ground truth answers」(PLOS ONE、ChatGPT の基盤モデル 4 版を API 経由で、米国の新卒採用という設定)